木型というのは、作る靴の形を決める型のことで「ラスト」とも呼ばれます。
「型」というと、たい焼きのように、型の中に物を入れて、形を作るタイプもありますが、靴の場合は逆で、型の外側に沿わせて形を作ります。
木型でスニーカーの何が決まるの?
木型によって、寸法、形状、ヒールの高さが決まります。
この3つは、木型を作る前に決めておかなくてはいけないポイントでもあります。
木型の違いによるスニーカーへの影響を詳しく解説してみましょう。
寸法
スニーカーの「中」つまり靴の内側の寸法は、木型で決まります。
「外」は、同じ木型でも、作るスニーカーによって出来上がる大きさは異なります。
靴の内側の寸法?
木型の大きさとはつまり、靴の中(足が入る部分)の寸法のことです。
木型に素材をそわせて作る靴。出来上がった靴の内側が木型より小さくなることはありません。
また、木型にしっかりとそわすことできちんとした靴が出来上がりますので、出来上がる靴と木型の間に隙間ができているということはなく(※1)、靴の内側が木型よりも大きくなることもありません。
※1:曲線の強いところでは、デザインによってわずかな隙間が生じることはある。
外側の寸法:なんで同じ木型で違う大きさの靴になるの?
木型の外側に素材の厚みが加わりますから、薄い革で作った靴と、厚い革を使った靴では出来上がりの大きさが違ってきます。
ソールも、薄いソールと厚いソールでは、同じ木型の靴に使った場合でも見た目が違う靴になります。
例えば登山靴は、とっても大きくてゴツイですが、木型も大きいかというとそうではありません。
使われている木型自体は普通なのですが、使われる素材が分厚いので、靴の外側が大きくなるのです。
形状
寸法に関わってくるところですが、つま先の形や、同じ寸法でも幅で取るのか、厚みで取るかで、形状の全く違う木型になります。
どういうことかというと、サイズ表記は同じなのに、見た目が全く違う靴になるということです。
また、靴の印象を決定づけるつま先の形も大筋は木型で決まります。
ヒールの高さ
木型に設定された高さ以外で靴を作ろうとすると、立ちずらい、歩きずらい、安定しないなど、まともに作ることは出来ません。
しかし、市販されている靴の中には、意図的にずらしているのかな?と思われる靴もあります。それに特殊な靴底を用いることでバランスを取っている靴もあります。
そして、ルッチェのオーダーメイドスニーカーにおいてもそうしたずらしの応用を使って作ることがあります。
木型の作り方
木型にはいくつかの作り方があります。
ここでは、量産メーカーの生産方法ではなく、オーダーや、量産のモデルとなるような木型の作り方を紹介します。
各工房やメーカーによって、作る靴によって、違う手法を選びますので、代表例を紹介します。
木やプラスチックの塊から削り出す
昔ながらの方法で、最も基本的なやり方です。
昔ながらの工具を使って木から削り出す工房もあれば、電動工具を使って削る工房もあります。
ルッチェは後者です。作業スピードが段違いに早いので、イメージがどんどん形になっていく感覚が好きです。
手製靴の工房には機械類を置いていない所もあるので、必然的に手作業になるとも言えますが、職人によってやりやすいスタイルがありますので、どちらが優れているというわけではありません。
ルッチェの場合も、仕上げや微調整は手でヤスリを使って行います。
ギブスを取って、ウレタンを流し込む
これは、主に医療系の靴で行われる手法です。
足の形のコピーを取る必要がある場合や、足首から上までをきっちり保持する靴のための木型づくりにはとても良い方法です。
ルッチェでも、必要な場合には行っています。
普通のスニーカーを作るのに、この方法を取ったほうが足にフィットするかというと、そうはならないのが面白いところです。
このような、足の形状のコピーである足型ベースで作るスニーカーよりも、靴の形状を意識して足の寸法や形を反映させて作る、靴型ベースで作ったほうが、履きやすく、歩きやすいスニーカーができます。
既存の木型に手を加える
木型メーカーが作ったベースや、過去に工房で作った木型を元にして、修正を加えて作る方法です。
寸法を足したり引いたりしながら、シルエットを調整し、元々の木型の特徴を反映しながら新しい木型を作りたいときに適しています。
出来上がったスニーカーの評判が良い木型があったとして、履き心地はそのままに、つま先の形を変えたり、もう少し幅が広い人(狭い人)にフィットするように大きく(小さく)修正することができるので便利です。
3Dプリンタ
3Dスキャナーで足を読み込み、その形状を反映させて設計し、そのまま3Dプリンターで印刷して木型を作る方法があります。
似た方法で、3Dスキャナで読み込んだデータを、機械によってプラスチックの塊から削り出すという方法があります。
木型なのにプラスチック製?
木製の木型も使われていますが、現在は多くがプラスチック製になっています。
木型に使われる木材は、湿気や乾燥でも大きさがやたらに変化せず、固さがあるけれど釘が刺さりやすく、でも抜けにくいなど、何でもよいわけではありません。
そういう木材を用意するよりも、プラスチックの方が手に入りやすく、量産にも適しているので、プラスチックが主流です。
一方で、オーダーメイドの工房などでは、木製のメリットを重要視して、今も使っている所はあります。
木型とシューツリーはどう違うの?
木型によく似た物で、シューツリーというものがあります。
プラスチック製もありますが、最近は木製の方がよくみかけます。
木型とシューツリーの違いを聞かれることがたまにありますが、全く違うものです。
簡単に言うと、木型は靴を作る時に使うもので、シューツリーは出来上がった靴の保管などに使うものです。