歩きやすい靴はアウトソールで決まる?歩きやすい靴底の形状とは

歩きやすい靴はアウトソールで決まる?歩きやすい靴底の形状とは

【だれが履いても歩きやすい靴】は、残念ながら存在しません。

何故でしょうか?

靴底には大きく分けて2つのタイプがあり、どちらが歩きやすいと感じるかは人によって違うからです。

先日、2022年3月23日に、アシックスのブランドペダラから、「歩行に要するエネルギーをセーブするウォーキングシューズ」が発売されました。

靴底(アウトソール)前部にカーブを設けることで、少ないエネルギーで効率よく歩けるように設計されているということです。

では、その靴底で作られた靴は誰にとっても歩きやすい靴なのかというと、そうとは言えません。

歩きやすい靴底とはどういう底なのでしょうか。

靴底前部にカーブがある靴は歩きやすい?

アシックスの「PEDALA RIDEWALK」

上の画像が、今回発売されたアシックスの「PEDALA RIDEWALK」です。

靴底前部にカーブをつけて歩行効率をよくしているとのことで、そのカーブ形状や素材について、アシックススポーツ工学研究所で分析したデータをもとに作られているとのこと。

少ない力で歩けるから歩きやすい

よく「かかとを押し上げられているみたい」とか「前に体を運ばれる」という風な感想が聞かれるのがこのタイプの靴です。

この形状のアウトソールが歩きやすい理由は、歩き始めると、アウトソールのカーブによって靴がコロンと前に転がるようになり、前に進みやすくなり、歩きやすいと感じます。

少し前に大ブームを起こした、NIKEの厚底ランニングシューズもこのタイプの仲間です。

とはいえ、靴底前部をカーブさせるという手法はかなり古くからあるものです。

ドイツの整形靴では、このカーブをとても重要なもので、作り手にとっては基礎的で大切な技術として私も最初の頃よく指導されました。

その他、よく見ると多くの既製靴がそういう形状になっています。

歩き方を導かれるから歩きづらい

確かに、このタイプの靴はぐんぐん歩ける感じがします。だからといって【靴底前部がカーブした形状】=【歩きやすい靴】なのかというと、そうではありません。

このタイプを歩きにくいと感じる人も多くいます。

足を導いてくれる靴ですが、靴が導く足の動きが、履く人にとって歩きやすい動きとは限らないからです。

かかとを押し上げられているみたいという感想のように、足をグングン前に運んでくれますが、足の動きを靴が決めることになります。

そのことがかえって、靴底前部がカーブした形状の靴を歩きにくいと感じる原因になる人もいるのです。

靴底にカーブが無くても歩きやすい靴とは?

では、靴底の前部にカーブが無いアウトソールの靴とはどういう靴でしょう。

それは、靴底が曲がりやすい、いわゆる「返りの良い靴」です。

カーブのある靴は、カーブをつけるためにどうしても厚底になりますが、こちらはそれに比べると薄めのアウトソールになります。

足が自由に動けるから歩きやすい

アウトソールの返りの良さは、足の動きの自由度に関係します。

履く人のタイミングで足を運べるので、それが履きやすいと感じます。

ランニングシューズも、以前は返りの良いこのタイプのソールが主流でした。

足と地面が近いから歩きやすい

これは「歩きやすい」とは少し違うかもしれませんが、地面を感じられる靴の方が安心して歩けるという人もいます。

曲がりやすい靴はアウトソールが薄めに作られていることが多いですから、地面と足が近く、地面を足で感じられるのです。

この場合、返りの良いアウトソールの靴であっても、少し厚めだとダメなのですが、薄いアウトソールの靴を履き比べた時、返りの良い靴とアウトソールの硬い返りの悪い靴では、返りの良い靴の方が選ばれることが多いです。

自力で歩くから疲れやすい

靴が転がって足を前に運んでくれる靴底前部にカーブをつけた靴と違い、返りの良い靴は「歩く」ための足の運びを、全て自力で行わなくてはいけません。

当たり前と言えばそうですが、その分、返りの良い靴の方が筋肉の活動量は多くなりますから、疲れやすいと言えるかもしれません。

少し前にNIKEのフリーという靴が流行りました。靴底がとっても柔らかく、アウトソールをどの方向にもぐにゃぐにゃ曲げる事ができる靴なので、足をどの方向に運んでも、靴が自在についてきてくれるのです。

ところが、短時間は足が自由で快適に感じても、長時間歩くと足に負担になるというデメリットもある靴でした。

適度に足をサポートする靴であることもまた大切です。

自分にとって歩きやすいのがどのタイプかを知ろう

ざっくりと2タイプに分けてお話しましたが、ご自身の履きやすいと感じて良く履いている靴はどちらのタイプでしょうか。

過去に履いていた靴もふまえて考えてみたときに、傾向が見えてくるかもしれません。

新しい靴を買うときには、アウトソールの形状による歩行サポートタイプか、返りの良さによる自由な歩行タイプか、意識して試着してみると良いでしょう。

そうやっていくうちに、自分にとっての歩きやすいタイプがどちら寄りなのかが分かってきます。

歩きやすい靴のタイプは変わることを知っておこう

歩きやすいと感じつ靴のタイプは変わります。

年齢が大きな条件ですが、それ以外にも様々な条件で、歩きやすい靴は変化します。

これについては「歩きやすい靴は変わることもある」と知っておいてもらえればそれでよいです。

ある時、前から履いていた靴が歩きにくくなったといって、悩む人もいます。

体調の変化や体の変化を心配するのですが、歩きやすい靴が変わったんだと思えば、それで済むことです。

体調や体に変化があったのでしょうが、思い当たる病気やケガが無い場合、自然な変化として、考え過ぎずに受け入れることをお勧めします。

実際の靴は、色々な条件が混ざっているので、見極めが大事

実際には、きれいに2つのタイプに分かれているわけではありません。

この2つのタイプの中間や第3のタイプもあります。

お店の人に相談するのも良いですし、自分で履いてみて、どちらのタイプなのかを自分で決めても良いことです。

メーカーは返りの良い靴と想定して作っても、履いた人が靴底全面カーブタイプと感じることもあるでしょうから、色々履いて見極められるようになることも大事です。

オーダーメイドスニーカーではどういうアウトソールを採用するの?

ルッチェの場合、オーダーメイドのスニーカーのアウトソールは、お客様に合わせて作ります。

無数の組み合わせの中から自在に作り上げるアウトソール

素材の種類、厚み、形状の組み合わせによって、お客様に最適なアウトソールを一つ一つ作り上げていきます。

その中には、厚底で靴底前面がカーブした物でも、足をお客様にとって最適な方向に導く形状のカーブを意図的に作り上げるものもあるでしょう。

または、返りの良い物で、厚みがあって靴底前面がカーブしているけれど、返りの良い物をつくることも可能です。

デザインの好みと歩きやすさの好みをオーダーで実現する

お客様の立ち方、歩き方や体の使い方を参考に、話を伺いながらどのような形状にするかを決めるので、これが正解と決めつけることがありません。

アウトソールはデザインにも大きく影響しますので、好みのバランスと、好みの歩きやすさをいかにして兼ね備えるかもオーダーだからこそできることです。